鬼守の巫女

「お父さんは……どうして私を浚ったりしたの?」

その私の問いに、彼は少し考える様に視線を外すと、それから小さく口を開いた。

「七宮は元々は総本家に仕える一族の者だった。特別な力は一切ない、ただの人間だ。しかしあの男は有ろう事かお前を浚い、一族からお前を隠し続けた。それはこの一族にも、そしてこの国にとっても、最も赦されない罪だ。お前を失えば鬼が力を取り戻し、世界が混沌に包まれる事が分かっていたはずなのにな」

「……どうして」

「先代の巫女は七宮と……恋仲だったらしい。しかしそれは絶対に許されない恋だ。結局巫女は先代朧源との間にお前を身籠り、そしてお前が生まれた。二人の間に何があったのかは誰にも分からない事だな」

男はそう言って悲しそうに笑う。
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