鬼守の巫女
第四十八章 安息の時
「とりあえずここで休憩しよう」
そう言って火伏さんはコンクリートの床に腰を下ろした。
それに促される様に、皆も火伏さんと同じ様に床や階段に座る。
誰かの微かな溜息と共に辺りを見回すと、灰色の寂れた室内が見えた。
……ここは皇町の今は使われていない廃ビルらしい。
しかし普段誰も来ない廃ビルだとしても……ここはとてもマズイのではないかと小さく息を呑む。
そっとガラスの嵌められていない窓から外を見ると、三棟並んだ立派なビルが見えた。
……地下に皇楼のある……あのビルだ。
そこからおそらく百メートルも離れていないこの場所に、私達は息を潜め隠れている。