鬼守の巫女

「……ぐっ!!」

火伏さんが小さく呻いてそのまま地面に倒れると、彼の手から刀が零れ落ちた。

カラカラと刀は地面を転がり、少し離れた床の上で止まる。

「何故本気で闘わない……捺。お前は真名の力を取り戻したんだろう?」

土室さんはそう言いながら、ゆっくりと彼に歩み寄る。

「俺はアンタを殺したい訳じゃないんでね。それに……そんな必要も無いさ」

フラフラと火伏さんは立ち上がり、ニヤリと不敵な笑みを浮かべた次の瞬間、火伏さんは勢いよく土室さんを……抱き締めた。

その突然の行動に、私と魏戎、それから抱き締められている土室さんですらも、ポカンと口を開けた。
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