鬼守の巫女

「……家に……帰りたい」

そう声を震わせて呟くと、私の頬を涙が伝って行った。

今まで我慢できた涙が溢れ出し、ポトポトと畳に落ちて行く。

「……凪様」

少女は小さく私の名を呼ぶと、悲しそうに瞳を揺らし私を見つめた。

「……お父さんに……会いたい」

ポロポロと涙を流しながら声を震わせる。

ただ肩を震わせて泣き続ける私を、彼女は静かに見つめていた。
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