鬼守の巫女

「……結界を壊す」

そう小さく呟く。

今までちゃんと考えた事が無かった。

結界を壊すと言う事が……一体何を意味しているのか。

……結界の封印となった鬼。

その鬼は自分の愛する人を守る為に、その命を捧げ結界になった。

永遠とも思える長い時を、たった一人きりで過ごしてきた。

……私はその結界を壊す。

ずっと怖くて聞けなかった。

結界を壊すと言う事は……その鬼を殺す事なのだろうか。

……考えてはいけない。

私は結界を壊すと、《彼等》と約束した。

ギュッと強く膝を抱え、揺れる心をそっと抑える。
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