鬼守の巫女

「でもある日、稔は僕に秘密を打ち明けた。自分には不思議な力がある……と」

瑠愧のその言葉と共に琥珀は私の手から飛び降りると、瑠愧の手にそっと体を擦り寄せる。

「稔は僕の目の前で式神を使ったんだ。僕はその時初めて……稔があの《一族》の者だと知った。そしてそれと同時に……全てが終わった様な気がした」

瑠愧はそう言って琥珀を優しく撫でながら、悲しそうに笑う。

「だって稔は僕達《鬼》の敵で……そして僕は稔達《一族》の敵だ。彼等は僕の仲間を殺し……そして僕等は彼の仲間を殺す。そういう運命の元に生まれたんだから」

瑠愧のその言葉に胸がツキツキと痛んだ。

……どうして争わなければいけないのだろうか。

運命はいつも優しいモノ達を傷付ける。
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