鬼守の巫女

「凪も……稔と同じ事を言ってくれたよね。本当に嬉しかったんだ。涙が出るくらい……嬉しかった」

「……瑠愧」

小さく彼の名を呼ぶと、瑠愧は少し悲しそうに笑って目を閉じる。

「魏戎も……凄く嬉しかったんだと思う」

「……え?」

瑠愧の呟きに小さく声を漏らす。

「だから魏戎は凪を殺せなかった。心臓を喰らえば魏戎は過去の力を取り戻し、一族を根絶やしにする事だって出来た筈なんだ。でも……それをしなかった」

瑠愧はそう言ってギュッと強く手を握り締めた。
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