鬼守の巫女

でも……私は彼等の優しさを知っている。

全ては結界を壊せば救われるのだろうか。

この苦しい思いも、いつかは消えて穏やかなモノへと変わるのだろうか。

そんな事を考えたまま、心の中で自嘲気味に笑った。

……ああ、私はまた自分の事ばかり。

この涙は魅麗の為でも死んでいった人達の為でも無い。

……可哀相な自分の為の涙だ。

どうしたら強くなれるのだろうか。

どうしたら皆を救えるのだろうか。

……そんな力は……私には無い。

次第に嗚咽を漏らし泣き続ける私を、瑠愧は静かに見つめている。

彼の瞳が切なく揺れ、それを見て更に涙が零れ落ちた。
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