鬼守の巫女
『貴女はもう……あの日常へは戻れない』
土室さんが言ったあの言葉が頭の中に響き、それを反芻したまま静かに目を閉じた。
……鬼守の巫女。
鬼を封じる巫女。
結界に祈りを捧げ、この国を守る者。
巫女の証。
星形の痣。
……鬼。
赤い瞳。
異形の者。
残酷で美しい悪しき者。
人間の敵。
皇一族が倒す敵。
……皇一族。
火伏、眞水、土室、小金井、木住野、樫月、日向。
総本家当主朧源。
定められた巫女の相手。
前朧源が私の本当の父。
前鬼守の巫女が私のお母さん。
一級罪人。
七宮拓郎。
……お父さん。
深い闇の中、様々な事が頭を廻った。
……もう、あの家には帰れない。
……あの、穏やかな日常には。
真新しい布団の香りと深い孤独の中、私の頬をまた涙が流れて行った。