鬼守の巫女
「あの人はとても優しい人だった。誰にでも優しく温かな人だった。でも……あの人は変わってしまった。……変わらなくてはならなかった」
馨さんは俯いたまま悲しそうに呟くと、少し自嘲気味に笑った。
「この一族と結界を守る為……朧源様は多くのモノを犠牲にしました。全てをこの一族の為に捧げ、それを守る為に沢山の罪に濡れ……そしてあの人は自分の心を失ってしまった」
「……馨さん」
「凪様のお気持ちも分かります。私もこの一族の……樫月家の当主として生まれた事を何度嘆き悔いた事か分かりません。何故こんなモノの為に生きなくてはならない。こんなモノの為に死ななくてはならないのかと」
馨さんはそう言うと、私の手を強く握る。