鬼守の巫女
《それがかつて……人間を根絶やしにしようとした鬼でも……ですか?》
彼女の囁きが繰り返し頭の中を廻り続け、言い表せない感情が私の体を支配していく。
「……魏戎」
そっと目を閉じ震える声で彼の名を呼ぶと、優しい赤い瞳と彼の香りが蘇る。
しかしそれと同時にあの時見せた冷たい瞳と、あの禍々しい揺らめきを思い出し……まるで何かを訴える様に頭がガンガンと酷く痛んだ。
「……魏戎。魏戎。魏戎……」
繰り返し彼の名を呼び、震える自分の体をきつく抱き締めると……どうして溢れたのか分からない生温い涙が私の頬を伝って行った。