鬼守の巫女

「立ちなさい!!昇馬!!」

その彼女の叫びに、少年は地面に転がった剣に必死に震える手を伸ばす。

しかしその手はほんの少しだけ届かず、少年は芋虫のように地面を這って剣の元へと近付いて行く。

その姿を女の人は冷たい瞳で見つめたまま、苛立つように唇を噛み締めていた。

辺りはシンと静まり返り、少年の荒い呼吸と体を引き摺る悲しい音だけが響き続ける。
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