鬼守の巫女

《……鬼は俺の父さんを殺した敵。絶対に殺さなくてはならない敵。絶対に赦してはならない敵》

そう少年の心の声が聞こえて来た。

きつく唇を噛み締め、湧き上がる怒りと憎悪を抑える様に、少年は険しい顔をしたまま歩き続ける。

しかしその顔が……悲しそうに見えるのは気のせいだろうか。

《……知ってるよ。俺だって》

視界がぼやけ、次第に遠くなっていく少年の声に耳を傾ける。

《……鬼にも優しい奴等が居るって事ぐらい》

その彼の悲しい呟きと共に、目の前が深い闇へと包まれた。
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