鬼守の巫女

「まだ傷は癒えていないですよ。静かに寝ていた方が……」

「いつまでも寝てられないだろ?……《奴等》はここに来る。……必ずな」

心配する彩乃さんの言葉を遮って小金井さんはそう言うと、静かに振り返り私を見つめた。

「……凪」

「……は、はい」

小金井さんに名を呼ばれ、少し表情を強張らせたまま彼を見つめる。

「朧源様を信じろ。他の誰よりもお前を思っているのはあの人だ。お前はあの鬼に……騙されているんだよ」

彼はそれだけ言うと、ボロボロの体を引き摺り廊下の先へと消えて行く。
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