鬼守の巫女
第六十二章 愛しき鬼
揺れる階段を上り、そっと外へと足を踏み出すと……そこには美しい月が悲しく光っていた。
どこか遠くからが断続的に衝撃音が聞こえ、地面が微かに揺れている。
そしてその音は、次第にこちらに向かって近付いてきた。
「……来るぞ」
朧源の呟きと同時に、夜空に黒い影が見えた。
影は屋根を伝い、そして私から数十メートル離れた地面に華麗に着地を決める。
そしてその影を月の光が照らし出し、見えた姿にギュッと強く手にした剣を握り締めた。