鬼守の巫女

「……魏戎」

そう小さく名を呼び、そこに映る男の姿を見つめた。

その姿は私が知っている彼よりも……少し幼く見える。

『……何故だ魏罫。俺達が我慢する必要がどこにある。先に手を出してきたのはあの人間達だぞ』

魏戎はそう言って少し鋭い視線で目の前の男を睨む。

『落ち着け魏戎……そう事を荒立てるな。今回焼かれた森に居た者達はほとんどこの森に逃げ込んでいる。村を滅ぼす必要などないだろう』

魏戎と同じ顔をしている男は、そう言って魏戎の肩をポンと叩いて笑った。

見分けがつかない程にそっくりな二人の唯一違う所と言えば……髪が長い事ぐらいか。

魏罫と呼ばれた男は髪が長く、それを緩く結っている。
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