鬼守の巫女

「……朧源」

魏戎のその声の方へ視線を向けると、そこには馨さん朧源が立っているのが見えた。

それに魏戎は近付くと、真っ直ぐに朧源を見つめる。

「共に……生きられる未来を信じてはみないか?」

そう言って魏戎は朧源に向かって……そっと手を差し伸べる。

その差し出された手を朧源は暫く見つめていると、それから静かに微笑んだ。

「……全てを失った私にも……まだやれる事があると言うのなら」

そう言って朧源は魏戎の手を握った。

その瞬間、周りの皆が嬉しそうに声を上げた。

朝日が照らすその中で、朧源と魏戎はまるで誓いを立てる様に、強く手を繋ぎ合った。

それから朧源は手を離すと、静かに空を見上げる。
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