恋の旋律



俺らは田渕と有沢の元に行った。


「…有沢」


渋川は呟いた。



有沢は泣き腫らした顔でこっちを向いた。


田渕はそっと背中を押した。



「……渋川に言ったら?」


田渕は頭を撫でながら言った。


「…うん」


有沢は渋川の元へ歩み寄った。


「行こ?」


田渕は俺の耳元で囁いた。


「あぁ」


気を遣ってその場を離れた。




人影が少ない所まで来て俺は田渕を抱きしめた。



「たっ高梨ッ…」


田渕はわたわたと焦った。


「バカッ…俺以外の男に抱かれてんな」


俺は腕の力を強めた。


「ごめんね…あまりにも突然だったから…」


田渕は俺の後ろに手を回してギュッとして、顔を埋めた。


「なんで渋川…」


田渕は呟いた。



「可愛いからだろ
それに性格いいしな
俺が惚れるくらいだぞ」



「そんなことないよぉ」



田渕は頬を赤く染めて上目遣いをした。




< 60 / 121 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop