白黒プリンスと囚われのメイドさま

 私は蓮さまに手を引かれ、生い茂る林の中を歩いて行く。

 「どうしてここだけフェンスに囲まれているんですか?」

 「この湖で人が亡くなっているんだよ」

 「えっ!!!?」

 林を抜けると…蓮さまの言う通り、小さな湖が存在した。

 生い茂った林に隠れ、ひっそりと佇む湖。湖面は朝の陽光に触れ、輝やいている。

 「…誰が亡くなったんですか?」

 「徹だ」

 「!!?」

 蓮さまのお兄さま…!!?

 蓮さまは湖のほとりに近づく。

 ほとりの大きな石には花が手向けられていた。

 「誰かが来ていたのか?」

 でも手向ける花にしては…似合わないアザミの花…。

 「……」

 蓮さまは持っていた花束をアザミの花の隣に置いた。

 私たちはその場に座り、手を合わせる。
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