白黒プリンスと囚われのメイドさま

 美紗緒の唇は唾液で濡れ、艶めく。

 「……蓮…私…」

 「……」

 キスだけで今は満足だった。

 俺は美紗緒の体を離す。

 「…どうしようも出来ないのに…駆け落ちでもすれば…一緒になれるかな」

 「蓮…」

 「……」

 こんなにも…美紗緒を求めているのに…俺は駆け落ちする勇気は出なかった。

 父上に代わって、会社の仕事をした半年間。

 俺は父上の大変さが身に染みた。

 まだまだ…体調の思わしくない父上を置いて身勝手なことは出来ない。

 「……美紗緒の父上みたいにカッコいいことは出来ないみたいだ」

 「蓮……」
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