夜空に咲く僕たちの願い
当時、矢吹俊介(やぶき しゅんすけ)は12歳だった。
季節は小学6年生になったばかりの春だった。
夕暮れ色に染まる学校。
その日、親友の高城渓斗(たかじょう けいと)に図書館に呼び出されたのだ。
俺は古くなったランドセルを持ち、6年1組を飛び出す。
渓斗からの呼び出しは珍しかった。
いつも俺が渓斗を呼びに行っていたから。
珍しくて少し不気味に思った。
どうしたのだろう?
何かあったのかな。
もしかしてバレたかな?
俺が算数のテストで20点取ったこと。
前日渓斗に教えてもらってこの点数はありえないだろ?
この点数を見て俺自身吹き出して笑っちゃったよ。
お母さんにも見せられない点数。
帰ってから速攻ベッドの下に隠した。
だから証拠はない。
もし聞かれたら「良くはなかったよ」って言えばいい。
本当のことだろ?
“良くない”のは。
でもこんなことでわざわざ図書館に呼び出すか?
じゃあ違うこと?
もしかして、あのこと?