夜空に咲く僕たちの願い
どうして渓斗がここにいるのかが分からなかった。
その理由を幾つも考えても思い浮かんでは来なくて、呆気なく頭の中で弾けて消えた。
体が尋常じゃないくらい震えている。
息すらまともに出来ない俺は、ただ渓斗が消えて行った部屋までゆっくりと歩いた。
隙間から光が溢れる。
薄いドアから会話が聞こえてきた。
別に盗み聞きをしたかったわけじゃない。
真実を知りたかっただけ。
「どう?調子は?」
「………まぁまぁかな」
渓斗は体にどこか悪いとこがあったのだろうか。
でも今まで生活を共にしてきて体調が悪いとか言っていなかったし…
ふとあることを思い出した。
前に渓斗が言っていた言葉を。
「人に言えない悩みくらい俺にだってある」
「死にたいって思ったことあるか?」
床に散らばった文字たち。
“どうして生まれてきたの”
“何で俺だけ”
そして俺が瑠花と付き合ったとき。
「いつかダブルデートしようぜ」と言ったら「…できるかな」と悲しそうに言った。
俺は唇を噛み締めて、ドアノブを思いきり引いた。
「……渓斗!!!」