夜空に咲く僕たちの願い


渓斗が歩いてきた道にもし灯りがなかったら、俺は渓斗の灯りになってやる。
お前が泣くならずっと傍にいてやるしそれくらいの覚悟はあった。



…勢いよく入った室内は、思ったより明るかった。
イメージではどんよりとした空気が詰まっているのだろうと思ったが、白を基調にされた部屋からは清潔感が溢れていた。


そして突然俺が現れたせいか、女の先生と渓斗が驚いた表情をしてこちらを見ていた。




「…俊介…」



小さく渓斗が呟く。
その瞬間夢では醒めてくれるのだが、今日は違った。
冷たい空気が肌に染み込み、寒さを感じさせる。

夢だと願ったがそれは儚く散った。




「渓斗…お前…なんでここにいるんだよ…」




自分でも驚いた。
声が震えていたこと。
それを聞いた渓斗は目を泳がせ、その場を立った。
パイプ椅子が軋む音はあまり好きではない。



「…ごめん……」




「ちょ…渓斗!!!」




渓斗は俺に一言こう呟いて、部屋から出て行った。
通り過ぎるとき微かに見えた。


渓斗の涙を。




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