夜空に咲く僕たちの願い


人間の弱い部分を見た気がした。
見てはいけない何かを見てしまった気がした。



勢いよく開いたドアから流れて込む空気が俺に冷静さを与えた。
居ても立っても居られなくなった俺は渓斗のあとを追いかけようとした。
だがその時、先生に腕を掴まれた。
俺は後ろを振り向くと、真っ直ぐな瞳で俺を見ていた。




「離してくれますか?渓斗のところ行きたいんです」




「行ってどうなるの?彼をどうやって慰める気?今あなたが行っても何の役にも立たないわ」



「でも渓斗は泣いてました」




「…どうして渓斗くんがここに来たか分かる?」




「分かりません。けど…」





「教えてあげるから座りなさい」




先生は俺の腕を離し、先ほど渓斗が座っていたパイプ椅子に座るよう命じた。
言う通りに椅子に座るとそこからは渓斗の温もりがあった。


渓斗の涙を思い出す度に胸が痛い。


ごめん、渓斗。
今からお前の心の闇を覗いてもいいかな。





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