夜空に咲く僕たちの願い


静まり返る部屋に、先生と俺が向き合って座っていた。
手には「飲みなさい」と渡されたコーヒーがあった。
湯気の立つコーヒーをどうしても飲みたいと意欲が湧かなかった。
これを飲んでも震える体は止まってはくれない気がしたから。



「…あの…」




「あなた、矢吹俊介くんね?」



「あっはい。そうです」




コーヒーを一口飲み、先生は静かにこう言った。
何故俺の名前を知っているのか疑問に思ったが、聞こうとはしなかった。
余分な話をしている暇などなかった。
とにかく、渓斗の涙の意味を知りたかったから。




「渓斗くんがここに初めて来たのが春くらいよ。深刻な顔をしてね、私に最初に言った言葉が今でも憶えているわ」





「…渓斗は…その…どうして…」




言葉が上手く出てこない。
次第にそれは頭の回転も遅くさせる。


理由を聞くのが怖かった。





「これから私が話すことにあなたは渓斗くんを幻滅したりしない?」





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