夜空に咲く僕たちの願い
正直、その先生の質問に首を縦には出来なかった。
コーヒーに視線を一点にし、ただ耳だけを働かせていた。
ごくん、と唾を飲み続く言葉を待った。
「渓斗くんがここに来た理由が、自分は自分ではないと思ったからよ。私に“生きていていいと思う?”と聞いてきたわ。私はいきなりで驚いたけど…渓斗くんの瞳が真っ暗で放っておけないと思ったの」
ついに言葉を失った俺はただ下を向いて聞いていた。
「話を聞いていたらね、渓斗くんは自分をすごく憎んでいた。それからカウンセリングが始まったのよ」
…カウンセリング?
一体何のカウンセリングなのだろうか。
話を聞いていても理由が浮かんで来なかった。
焦りだす心臓。
鼓動の動きが尋常ではない。
そして周りが見えなくなった。窓の外の空気は冷たそうで、まるで俺の心のようだった。
「渓斗くんは…性同一性障害なのよ…」