夜空に咲く僕たちの願い



気がついたら走っていた。
目的地は決まっていた。
お前はきっとあそこにいる。


夜空を見上げるとそこには沢山の星が散らばっていた。
冬の夜空は冷たい空気で星をクリアに見せてくれる。
冬の夜空は好きだった。
寒さに耐えながら見つめる夜空には心が癒された。



飛び出す俺に先生はこう言った。




「渓斗くんは俊介くんのことを大切に思っている!!だから傷つけたりしないで」




傷つけたりなんかするかよ。
渓斗は俺の初めての親友なのだから。
ポケットの中の携帯が震える。走りながらそれを見ると瑠花からだった。
でも今はそんな余裕なんかなかった。



向かった場所は、俺たちの想い出の場所。
天体観測をしたあの場所。
お前はきっとここにいると思ったんだ。



坂道を登る。
やはり息は乱れていた。
体力の衰えか。
まだ若いはずなのに。


額からは汗が滲んでいた。
冬には滅多に汗など出ないが、冬に掻く汗はどこか新鮮だった。





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