夜空に咲く僕たちの願い



自分の異変に気づいたのは、あの天体観測の日だった。
理由は教えてくれなかったが、自分の気持ちを見失った渓斗はどうしていいか分からなくなったみたいだ。
それがずっと続き、高校生になった春、精神科を訪れ“性同一性障害”だと診断をされた。
だが渓斗の場合、性別再判定手術いわゆる性転換手術は望んでいないらしい。
自分の不快感に悩み、苦しんでいたようだ。

その話を聞いていた俺はただずっと頷いていた。
渓斗の心を全て見たかったから。


聞いたことのある病名だったがあまり実感がなく、まさかと初めは思ったけれど今は何も思わない。

事情を話す渓斗をちらりと見るとやはり渓斗で。
渓斗以外何者でもなかった。
だから関係ないって思ったんだ。
それが理由で渓斗と絶縁するなんて出来るわけもなかったし、したくもなかった。




「…俊介、今までごめん…」




そして渓斗は最後にこう言った。
なぜ謝ったのだろう。
謝ることなどないのに。





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