夜空に咲く僕たちの願い
俺が受け取ったのを確認すると翔太はホッとした表情を見せた。
そして小さく呟いた。
「ありがとう」と。
何が「ありがとう」なのか気になったがそれ以上言うのは止めた。
「じゃあまたね。気をつけて行ってきてね。あっちすごい雪だと思うから。まぁペンションは駅から近いから歩いて行けると思うよ」
「分かった。楽しんでくるよ。何から何までありがとうな。絶対お金は返すから」
「忘れられない想い出を作ってきてね。バイバイ」
翔太は二度手を振りくるりと俺に背中を向けて走って行った。それはまるで犬のようで。
犬だったらきっと尻尾を振っているのだと思う。
颯爽と走り抜ける翔太から忘れていた夏の香りがした。
俺の手には宿泊チケットとケロリンがいた。
俺はケロリンをダウンコートのポケットに入れて家に向かった。