夜空に咲く僕たちの願い
「七海ね。今行くわ」
母さんは小さく笑い玄関に向かって行った。
遠くから母さんと七海さんが話す声が聞こえてくる。
ほんの少しの好奇心だった。
ごくん、と息を飲みあの引き出しに近づいた。
そしてそれをゆっくり開けて中身を見る。
言葉を失った。
そこにはある写真と母子手帳。
フラッシュバックする。
昔母さんに自分の父さんのことを聞いた。
「僕のお父さんってどんな人?」
母さんは目尻を細く幸せそうに笑う。
「素敵な人よ。俊介の名前の中にお父さんの名前が入ってるの」
体が硬直する。
「……嘘だろ…」
今日は待ちに待ったクリスマスなのに。
届いたのはサンタクロースからのプレゼントではなく、絶望だった。
震える手で写真を持つ。
写真に映っていたのは…
若い頃の母さんと男の人…
それが誰だかすぐに分かった。それもそうだ。
近くで生活しているのだから。
「…瑠花のお父さん…」
母さんの隣で笑うのは若き頃の瑠花のお父さんだった。
肩を寄せ合い幸せそうに笑っていた。
俺はそれを裏返す。
そこには名前が書いてあった。
…思い出した。
瑠花のお父さんの名前。
それは…森山遊心(もりやま ゆしん)
心が、壊れる音が聞こえた。