夜空に咲く僕たちの願い
こんな目覚めの悪い夢をいつまでも見ていたくなかった。
小刻みに震える手。
どうしていいのか分からずただ、写真をずっと見つめていた。
涙すら溢れてこない。
涙を流したところで何も変わらないと自分でそう思ったからか。
涙を流したって今の状況は変わることなどまずない。
それなら流したくない。
だって今までの自分を否定したようで。
俺の父さんは昔病死したと聞かされた。
でもこれは嘘なのかもしれない。
不意にそう感じた。
ちらりと引き出しの中を見ると一枚の紙の存在に気がついた。
四つ折りになったそれは俺の思ったことの証明となった。
「…なんだよ…これ」
紙を開けるとそれは初めて見る婚姻届だった。
夫の名前の書く欄に、森山遊心と。
妻の名前の書く欄に、矢吹紗智子と。
そして証人の欄に、菱川七海と書いてあった。
七海さんの旧姓は菱川(ひしかわ)だった。
また息ができなくなった。