夜空に咲く僕たちの願い


俺は支度をして渓斗を起こしに行く。



部屋に入り気持ち良さそうに眠る渓斗に近寄っていく。


年々、渓斗は色っぽさを増して今では学校のアイドルだ。
だが心を開いたことは一度もない。
未だに渓斗は自分の中で苦しんでいるのだ。




「渓斗、起きろ。起きないと…」




チューするぞ。
途中まで言いかけたところで渓斗は体を起こす。
そして眉間に皺を寄せてこう言った。



「その作戦、いい加減やめたら?」





無理だよ、そんなの。
だって起きる確率高いから。



渓斗を起こしたあと俺は瑠花の部屋を訪れた。
真実を聞いてから、遊心さんとは前と同じように接している。遊心さんもそうしていた。
やっぱりお父さんだなんて思えたなくて、今のままでいいと思ったから。



…相変わらずピンク色の多い部屋は冷静さを乱していく。


目の前に無防備な瑠花がいるからだろうか。



俺は静かに歩み、瑠花を覗き込んだ。



ねぇ、瑠花。
頼むから起きないで…



神様、今日だけはお許しください。



目の前には愛しい人がいるんです。


おとぎ話では眠るお姫様は王子様のキスで目覚めるでしょ?



だからお願いです。


今だけは…俺の願いを…。






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