夜空に咲く僕たちの願い
「は?何て?」
「いっつも俊介がいるから恋愛が出来ないのよ。俊介がいなければ瑠花はもっと自由だったのに」
衝撃がくる。
体に当たったのは生暖かい春風なのに、俺が感じたのは硬い鉄板のような物に体をぶつけた感じだった。
いきなり何を言うんだよ。
今までの俺の努力は必要なかったってこと?
じゃあもういいよ。
好きにしてよ。
「…じゃあもうこれからは瑠花を助けたりしないから自分で何とかしろよ。俺と渓斗に頼ったりすんなよ」
俺は渓斗の手を離し、そこから立ち去った。
唇を強く噛み、当たる場所のない怒りを抱えて。
どうして分かってくれないの。俺がなぜ瑠花を助けるのか。
これだから女は鈍感で困る。
入学式の会場に足を向ける。
遠くから足音が近づいてきた。
「俊介!!」
その声は渓斗だ。
俺は聞こえないフリをして足早に向かっていく。
「俊介!!待てって!!」
腕を掴まれ動きを阻止された。オーラで分からないかな?
腹立ってること。
「なんだよ?」
「何であんなこと言ったんだよ。もっと他に言い方あっただろ?瑠花だって本当は…」
「渓斗には分からないよ。渓斗は悩みなんてないだろ?」
渓斗はそれ以上何も言わなかった。
俺は知らなかったんだ。
渓斗には人には言えない悩みがあったことなんて―…
この日から馬鹿なヤキモチ執事は目覚めのキスさえできずに眠り姫から身を引いた。