夜空に咲く僕たちの願い



「え!おい!渓斗!!」




突然の行動に驚いてしまう。
いきなりどうしたんだよ?
寄るとこってどこ?
足早に去っていく渓斗に疑問を抱いた。
別れ際の渓斗の顔の表情が暗かった気がする。
あんな表情を見せたのは腹痛になったとき以来だ。
どうかしたのだろうか。



俺は疑問を抱いたまま電車に乗り家に向かった。




「ただいま…」




「俊介おかえり。手洗いうがいしなさいね」




玄関でお決まりの挨拶をするとキッチンの方から母さんの声が聞こえてきた。
あぁ…そっか。
今日は確か夜勤の日だったっけ。


母さんは近くの診療所の看護師をしている。
「安月給だから辞めたい」と何年も前から言っているのになかなか辞めないのだ。
辛抱強いと言うのか、臆病者だからか。
そういう部分が母親に似てしまったのだな。
俺が瑠花を諦められないように。



「母さん今日って夜勤?」



「そうよ、明日の朝に帰ってくるからね」





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