眼鏡ッ仔と女装王子☆
「んー…まぁ良いよ スッピンの方が良いよね?ちょっと待ってて?」
「うん!
待ってるから早くしてね」
わかったって言って
急いでメイク室に入ったら…
重大な事に気付いてしまった
「着替え忘れた…」
いつもは
行きは女装で帰りはスッピン(男の格好)で帰ってる
行きと帰りで格好が違うと、荷物が多くて面倒だけど…
行きが女装なのは、何となくウィッグを付ける所とか、男の姿から女の服を着る所を誰にも見られたく無いから。
だけど…女の格好のまま帰るのは嫌だ
足がスースーして落ち着かないし、電車に乗ると痴漢にあうから。
仕方ない…
[着替え貸して??]
ダメ元で麗夜にメールしてみた
[ムリ!持ってない]
冷たい返事が帰って来た
麗夜の誘いを断るしか無いか…ケータイに手を伸ばした時
━コン コン
「今 僕着替えてるんで後で…」
良いですか??って言い終わる前にドアが開いた
「着替え無いんだろ?これ着ろよ」
「マジウザいんだけど?」
入って来たのは社長けん
「親父に向かってウザいはねぇーだろ」
俺の親父…
「あっ、そうだ。今日は母さんと俺で晩ごはん一緒に食べて来るから、適当に何か食っててくれ」
“わりぃな”と言って部屋を出て行こうとした親父の背中に
「なにが“わりぃな”だよ!いつまでお前ら、新婚気分なんだよ!」
と叫んだら、
恥ずかしそうにハニカんでいた…。
俺の親父は美人女優らしい母さんにベタ惚れだ…
俺はこの世界に入った時に誓った。母さんの子供って事も、父さんの子供って事も言わないでやっていこうと…
ズルって思われたく無いし、自分の力でどこまで上がれるか知りたかった。
きっと俺は負けず嫌いだ