姫様にkiss



「繋ぎ…たかった……から……」



小さく呟くとそのまま、朔真の腕の中に吸い込まれた。



優しく髪を撫でる手からは、もう、怒りは感じなかった。



「…姫はずるいな。」
「ごめん…」
「そこ、謝るとこじゃないでしょ。」
「…ごめん。」
「フッ。もういいから。だから…」



波の音で聞き取りにくかったけど



「…ずっと俺だけのものでいて。」



そう言ってくれたんだよね?





「うん。」



あたしは思いっきり返事をした。



朔真が少し驚いた顔をして、また笑った。





「姫〜戻って来て〜!」



美咲の声で気付いたけれど、辺りは少し暗くなり始めていた。



何しろ出発がお昼過ぎだからしょうがないか。



「はーい!」



美咲に見えるように、大きく手を振った。








< 117 / 266 >

この作品をシェア

pagetop