姫様にkiss
あの日は雨が降ってた。
酷い雨で、あたしは急ぎ足で、家に帰るところだった。
あたしはその頃から、車が嫌いで、いつも歩いて帰ってた。
その日は近道の公園の中を歩いていると、木の根本で座っている人影。
「傘、…持ってないんですか?これ、良ければどうぞ。」
男の人はチラッとあたしを見てから、あたしの差し出したハンカチを受け取った。
下を向いているから、顔がよく分からないけど、メガネが地面に落ちて、割れていた。
「これ…貴方のですよね?」
「あぁ。ありがとう。」
傘…やっぱり持ってないよね。
このまま放っておいたら、風邪引いちゃうかもしれないし。
その時のあたしは、どうしても目の前の男の人を放って、帰ることが出来なかった。