姫様にkiss
確かにあの時の朔真はひどかった。
何もかも信じられない、そんなような目をしてた。
だからかな?
あたしが放っておけなかったのは。
「何で、あんなになってたの?」
「知りたい?」
「…うん。」
「……姫はさ、知らない方が良い事実と知るべき事実があること、知ってる?」
「っ……。」
「例えば、姫が俺の過去を聞いて、俺を嫌いになって、俺も嫌われて傷つくのだとしたら。…それは、知らない方が良い事実なんだと思わない?」
朔真は消えそうな笑みを浮かべた。
「それは……違う。」
「えっ…?」
「例え、朔真の過去が酷いものだったとしても、それで嫌いになるならば。……あたしは今すぐ、お前を執事から解雇した方が良いと思う。
そんな中途半端な覚悟で、お前に気持ちを伝えた覚えはない。」
まっすぐに朔真を見る。
例え、お互いに不利益なのだとしても。
それでも知りたい。
…朔真の過去が。
あの出会いの原因が。