姫様にkiss



「フッ。姫には負けたよ。本当、ずるいよな。」



そう言って笑う朔真に、あの時の朔真が被った。



あの日に、消えかけていた朔真の姿が、目の前にちらつく。




「あの日、…俺は恋人にふられたんだ。いや、ふられるように仕向けたと言った方が、事実に近いかな。」
「恋、人…」



覚悟していたはずなのに、どうしても胸が痛む。



でも…



ふられるように仕向けたって、どういうこと…?





「別にふられて傷ついてたわけじゃない。むしろ、清々してた。…はずだったんだけどな。」



それから、朔真は覚悟を決めたように



何処か遠くを見るように、ぽつりぽつりと話し始めた。






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