姫様にkiss



 * * *





高台で男達から逃げていたはずなのに…



それなのに、いきなり海の中へと突き落とされて、息が出来なくなった。



どんどんどんどん沈んでいって…



そんな時に遠くから幻聴のように、いもしないはずの朔真の声が聞こえた。



必死にあたしの名を呼ぶ朔真。



そこであたしの記憶は途絶えた。











「め…姫…っ?!」
「朔…真……」



目を開けると、心配そうにあたしの顔を覗き込む朔真と美咲、佳斗君の姿が見えた。



あぁ…そうか。



あたし……海に落ちたんだ。






「…ごめ…ツっ……」
「落ちた時に水に強く体を打ちつけたらしいから、まだ安静にしてろ。」



確かに、起きようとすると、体のあちこちが酷く痛んだ。



朔真は皆の前だというのに、表の顔を忘れて、強い口調で言った。



「本当…ごめん……」
「もういいから。…寝てろ。」
「…ん。」









< 146 / 266 >

この作品をシェア

pagetop