姫様にkiss



「あの…先輩……」



キッと睨む。



幸太郎君は怯えたように、苦笑いをした。



でもその瞳が仔犬の様に、うるうるとしていて、冷たく突き放すことが出来なかった。



「…一分以内なら話を聞いてやらんでもないぞ。」
「あ、ありがとうございます…!!」



そして、幸太郎君はぽつりぽつりと話し始めた。



しかし、幸太郎君の話は無駄に長い上に、ごちゃごちゃしているので、要点をまとめると



「つまり、剣道部の部長が喧嘩を買ってしまい、あの剣道の名門、舘華高校と試合をしようとしている。」
「そうなんです。でも、全然適いそうになくて……」



当たり前だ。



去年の聖西ヶ崎学園の県内順位は69位。



決して強いとは言えない。



それに対して、舘華高校は県のベスト3に入る勢い。



特に、部長の冴垣は、相当な腕の持ち主だと聞いている。



そいつがいる時点でこちらの負けは目に見えているだろう。



「何でこんな試合を受けたんだ?」
「それは…」









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