姫様にkiss



「行く。」
「では、お乗りください、姫様。」



朔真はこうしてしょっちゅう裏表を使い分ける。



それは多分、人目を気にしてるんだと思うけど



執事が優秀ならば、その家は成功すると言うぐらい執事という職業は人目に見られている。



優秀な執事は引き抜きなんてことも稀ではないらしい。



朔真も何度か声をかけられているらしいんだけど…



「私は姫様の執事ですので。」と言って、その話をOKしたことはない。



嬉しいような、心苦しいような…



「姫、何食べる?」
「あたしは何でも…」
「では、今日のコースをお願いします。」
「かしこまりました。」



朔真がわざわざ隣町まで車を走らせたのは、そういう執事という職業を意識しなくても良いからなのかもしれない。



あたしをお嬢様だと知らない場所に行けば、執事という仕事からも解放されるから。












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