姫様にkiss
「はじめまして。私、神野れ…」
「名前は言わなくていい。」
「…かしこまりました。では、失礼いたします。」
朔真以外の執事なんか、執事として認めない。
だから名前も知らなくていい。
あたしは一人でいい。
もう誰も信じたくない。
そんな思いを抱えながら、あたしはもう一度眠りについた。
翌朝。
一日、学校を休んでしまったあたしはなんだかとても憂鬱だった。
今日から、車を運転するのは別の執事だから。
「姫様、ご朝食の準備が出来…」
「いらない。」
「かしこまりました。」
あたしが言えば、執事はそれに従う。
それだけのはずだった。
「姫様、お車の準備が…」
「今日は歩く。」
「かしこまりました。」
執事に否定は許されない。
そのはずだった。
それだけなら、何も考えずにすんだのに
こんな感情を覚えるなんて、きっとなかったのに。