姫様にkiss



 * * *





お父さんは結局、夜には帰ってしまった。



お父さんが帰ると、また家の中が静かになる。




「…朔真。」
「……。」
「朔真」
「…姫様、お願いですから、これ以上話しかけないでください。」



冷たく言い放たれる。



一向にこちらを向かない朔真に痺れを切らして、思いっきり後ろから抱きつく。





「やだ。……何があったの?」



ドサッ…とベッドに倒される。



あたしの上には苦しそうに顔を歪ませた朔真が乗っている。



「ん…ぁ……」
「何で抵抗しない?」
「…しない、よ。」
「嫌だって俺を突き飛ばしてくれよ。」
「何で……どうしてそんなこと言うの…?」



どうしてそんな悲しそうな顔をするの?



嫌い…なんて言えるわけないじゃん。






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