姫様にkiss
「…何を怒ってるわけ?」
「…別に。」
「怒ってんじゃん。」
「怒ってない。」
「ねぇ、姫…」
「だから怒ってないってば…!!!」
つい声を荒げてしまった。
ごめんと小さく謝って、気まずくなり窓の外を見る。
外は雨が降りだしそうで、真っ暗な空があたしの心のようだった。
「別に姫が何に怒ってるかなんて、無理に聞き出すつもりはないけどさ。……そんな泣きそうな顔されると、運転に集中出来ないんだよね。」
「いい迷惑。」とチラッとミラーであたしの表情を確認するようにしてから、付け足した。
「そんな言い方ってないよ…!」
「…なら、なんて言って欲しい?“姫様どうされましたか?何かおありになったのですか?”とか何とか、心配した顔で言って欲しいわけ?」
「そんなことは…言ってない……けど…」
「きっと姫はそう言っても、素直に答えてくれないと思う。特に俺相手には。…違った?」
何も言い返せないあたしに朔真はフッと笑うと、車を端に寄せて止めた。