姫様にkiss



来てくれるわけないのに…



来てもらっちゃいけないのに…





「あたしのせいだから……だから来て欲しいなんて望んじゃいけないのに…」



なんでこんなにも行事の度に、寂しい気持ちになるんだろう…



なんで毎回、お父さんやお母さんの姿を探してしまうんだろう…



あたしは何も望んではいけないのに………





「……姫は何も悪くない。」
「慰めなら…いらない。」



朔真がギュッとあたしを抱きしめる。



その温もりがやけに胸に染みて、涙腺が緩む。



「違う。慰めなんかじゃない。俺は知ってるよ。…姫が負けず嫌いで意地っ張りで…でも誰よりも優しくて寂しがりやだってこと。姫は少しだけ不器用なだけなんだ。」



“だから泣いていいよ。”



朔真のその言葉通りに、あたしは泣いた。



涙がとめどなく溢れてきて、頬を濡らした。











< 90 / 266 >

この作品をシェア

pagetop