姫様にkiss
「でも良かったよね。こういう時にバイトの経験が役にたつとは思わなかった!」
「そ、だね…。」
バイトのように上手くいけばいいけど…
何しろ相手は一般客じゃなく、貴族のお父様、お母様ばかりだからな。
…普通じゃだめだ。
「いらっしゃいませ。ようこそお越しいただきました。…では、どうぞこちらへ。」
慎重に…
お客様との距離は近すぎず、離れすぎず…
「…ご注文はお決まりでしょうか?」
「お抹茶、をいただけるかしら。」
「かしこまりました。」
抹茶の温度は冷ましすぎないように素早く…
決して零さない…
「どうぞ。お抹茶でございます。」
「すみません。こちらもよろしいですか?」
「はい。少々お待ちください。」
茶碗を机の上に置き、席を去ろうとした時だった。
「ちょっと待って。貴方……どうしてこの聖学祭があるか知っていらっしゃる?」
「え…」
「知らないのでしたらよろしいわ。引き止めて申し訳なかったわね。」
「…失礼…いたします。」