白球追いかけて
 完治の診断を受けた翌日から、通常の練習メニュー。久々にチームに戻ると、きちんとオレのポジションがあった。というか、代わりがいっぱいいるようなチームでもないのが寂しい。それでも、久々の練習は懐かしかった。
 ストレッチして、グランドを走る。夏が少しずつ去ろうとしているのに、その気配さえ感じさせないほど、まだ暑い。グランドを五周しただけで、うだるような汗が出て、少し疲労を感じた。やはり、夏の練習が持つ意味は大きい。久しぶりのグランドで練習不足を痛感した。
「へぇ~い」とグランドに響くやまびこコールの中に、自分がいるこの感覚。
 久々のキャッチボールで、後輩の球がとてもよく伸びてくるように感じる。ボールの縫い目がこちらを向いていて飛んでくる。飛んできたボールが少し横にそれ、取ることができなかった。すると後輩が帽子をとって、一礼する。また、いつもの日常がはじまった。
 ノックの順番を待っているとき、前に並んでいるチームメイトたちの背中がひと回り大きく見えた。一年で一番暑い夏をグランドで乗り越えた男の勲章だった。
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