白球追いかけて
 寒い、痛い、眠い。そして、秋も終わりごろになると、イチョウ並木から落ちてくるギンナンが街を歩く人々に踏まれ、臭いという苦痛も加わる。
 明るく、あたたかい家庭の外では冬が近づいてきていた。
 この年の冬はとても寒かった。十一月も下旬になると、寒くなり、朝がつらい。携帯電話を買い換えたので、前に使っていた携帯電話を目覚ましに使う。でも、夜中にもメールが来て携帯電話が鳴るので、寝ていたら、目覚ましかメールかよくわからない。やっぱ、最後はうるさい目覚ましが、「ジリジリジリリリリリリ~」と鳴り、朝を告げるのだ。
 前日の筋肉痛が残っている日はなおさらで、起きてから学校への足取りが重かった。置き勉をしているのでカバンは軽くていいはずなのに、弁当や練習用のユニフォームでいつもパンパンになっている。それが、肩に重力のようにぐっとのしかかる。
 日が早く暮れはじめると、家に帰るといつもこたつに直行していた。夕食後、バラエティー番組を見ていると、ついうたた寝してしまう。ふと目を覚ますと、まだかすかに眠気が残っている。眠いが、風呂に入らなくてはならない。中学からの習慣で風呂上がりは入念にストレッチをし、メールを返してから布団に入るが、うたた寝したせいで眠くても寝つけない。そして眠い中、また次の朝がやってくる。その繰り返しが続いた。
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