白球追いかけて
 そんな冬、クリスマス前に彼女ができた。うちの野球部のマネージャーの友達で、よく試合を見に来ていたナツミというコだった。秋の練習試合が終ってから、ファミレスで打ち上げをしていたときに出会い、そこからちょくちょくメールをするようになった。
 クリスマスは練習後にデートする約束をした。ショッピングモールの大きなクリスマスツリーで待ち合わせ。少し風邪気味だったが、二人で映画を見に行った。話題の恋愛系の映画を見ようと思ったが、クリスマスは休日だったので、空席表示はXか△。少し遅めの時間の△は、端のほうでまだ二席続きが少しだけ残っていた。
「学生さんですか」
「はい
「学生証はありますか?」
 カバンの中を見たが、見当たらなかった。
「ないっす」
「それでは大人料金になりますが、いいですか?」
「はい」
「では大人二名で、三千六百円になります」
 財布には千円札が三枚、五百円玉が一つとあと少しの小銭が入っている。頑張ればギリギリ二枚とも買えそうだが、バイトもしていない高校生。しかし、ちょっときついけど、ここは男。おごるしかないと潔く-
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